運動を始める前に、己を知って百戦危うからず

健康運動指導士 大 方  孝

                       

⒈運動中の事故防止:

 中高年になると、関節や筋肉・骨・心臓や血管・肺などの機能が低下します。また、老化の度合いは、個人差が大きいので、運動を行う前には事故防止の観点から必ずメディカルチェックを受けることが大事です。特に、検診や検査で高脂血症や心臓病、高血圧、糖尿病、高尿酸血症、肥満などの指摘を受けたことがある人や最近検診を受けていない人は、運動を始める前に掛かりつけ医に相談の上検査を受診されることをお奨めします。また、膝や腰、肩などに痛みがある場合は、念のため整形外科で運動を行っても差し支えないかどうかその可否を診てもらうことが肝要です。

2.急に激しく運動すると足腰を痛めることに…

健康のために、運動を行うことはとても良いことですが、ちょっと待って下さい。意気込んで急に激しい運動を行うのはケガの元です。「昔取った杵柄」でお子さんの運動会などで張り切って走ったら、肉離れやアキレス腱を断裂したという話は少なくありません。

運動の種類によっては、その運動を行うための基礎体力が必要とされ、特別なスキルが要求される場合があります。いずれにしても、中高年の方がスポーツを楽しむ前に、先ずは基礎体力をつけるところから始めて見てはいかがでしょうか。関節内の軟骨や骨と骨をつないでいる靱帯、筋肉が骨に付着する部分の腱などの組織は、加齢と共に弾力性を失っています。関節や筋肉に急に強い負荷をかけていためることがないよう軽度な運動から始める事をオススメします。

また、肥満体やちょい太の方は、自体重が負荷となって、股間節・膝・足関節などの荷重関節を傷める可能性がありますので、水中での運動がオススメです。水中では浮力によって体重を減免してくれますので、誰でも無理なく楽しく運動を行うことが出来ます。

3.急激な運動は、心臓や血管に負担をかける…

運動を始めると、交感神経が興奮して心拍数が増え、心臓から送り出される血液量が増加します。これに伴い血圧も上昇して身体の末梢まで血液が流れるようになり、筋肉の酸素やエネルギー源の需要の増大に対応しようとするので、心臓や血管に大きな負担となります。中高年の方の場合には、心臓の機能の低下や動脈硬化の可能性もあるので、予備能力が低下しています。このような心臓や血管の老化が進展した状態で、急激に激しい運動を行うと心臓や血管に大きな負担をかけることになります。心拍数が増えれば、たくさんの酸素とエネルギーが必要となります。心筋に酸素と栄養を供給しているのは、冠状動脈です。この冠状動脈に加齢や高脂血症、糖尿病などで動脈硬化が進み、血管の内部に狭窄があると血流が滞り、心筋の一部分が酸欠状態に陥ることが起こります。これを心臓虚血と言い、胸痛が生じます。これが「狭心症」です。

また、運動を行うことで、血圧が上昇しますが動脈硬化が進んでいると心臓が収縮した時に血管がその流量に対応して拡張しないと血圧の異常上昇が起こります。この場合に、心筋梗塞や脳卒中、大動脈破裂を招く原因となりますので、くれぐれも中高年の方は、急に激しい運動を行ってはなりません。

4.有酸素運動は、脳と心臓を活性化する‥

有酸素運動とは、強度の低い運動を一定時間続けることで、身体に酸素をたくさん取り込んでエネルギーを消費し、呼吸機能や循環機能を高める効果があります。有酸素運動には、ウォーキングや水泳、水中歩行、ジョギング、サイクリング、エアロビクスダンスなどがあります。一般的には、「歩く」という動作は、人にとって基本的な動作です。しかし、中高年の方がウォーキングを行う場合、体重の負荷や天候や気温、交通状況などの環境を考慮すると室内プールで行う水中ウォーキングがオススメです。水の持つ特性が身体に優しく作用して、安全に手軽に誰でも出来きて、効果を実感できる運動です。運動の強度も低く、施設内の環境も一定に保たれていますので、運動不足だった人が始めるには最適な運動といえます。自分の体力に応じて速度や時間を加減することが出来き、水中では、抵抗の作用によって自然と動作もゆっくりとなりますので、ケガや筋肉や関節、靱帯などを傷める危険性もほとんどありません。また、抵抗の作用により、適度なレジスタンスエクササイズも行えるので、筋力の維持・増進も効果的です。さらに、水圧の作用により静脈の血流も好転しますので、心臓や血管への負担も低下します。また、温水や浮力、水の動き・流れにより、リラクセーション効果も高まります。このように水中ウォーキングを行うことで、血液循環が促進されて、脳への血流が好転し、運動の刺激が神経を介して脳に伝達されるので、脳の機能も活性化されるといわれています。

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