『あなたは大丈夫 ? 開栓方法次第で筋力低下』


                        健康運動指導士 大方 孝

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総務省は敬老の日に合わせ、65歳以上の推計人口が3623万人で、前年比1万人減だったと発表した。1950年以降で初めて減少したが総人口に占める割合は、29.1%と過去最高となった。年代別で見ると75歳以上は2005万人で初めて2000万人を超え、総人口の16.1%を占めた。また、80歳以上は、1259万人で総人口に占める割合は10.1%となり、10人に1人は80歳以上となった。我が国の高齢化は一段と進行する中で、着目すべきは、健康寿命の重要性である。健康寿命とは、寿命が延びても心身を健康な状態に保ち、自分らしく生きることが出来る期間をさす。高齢化が進展する中で健康寿命を延伸することは、個々人の幸福度(ウェルビーイング)を高め、さらに社会保障費の負担を軽減する上でも極めて重要と言える。
10月17日に『お~い お茶』の㈱伊藤園は「ペットボトルの開け方で筋力低下を簡便に把握できる可能性を確認」と発表。このニュースリリースの内容を紹介します。(伊藤園HRより参照)
㈱伊藤園と鹿児島大学医学部は共同で、高齢者の筋力低下のサインを、普及している「ペットボトル」の開け方(開栓動作)によって簡便に知ることができる可能性を示した。
 これまで、ペットボトルの開栓に困難を感じる人は、筋力が低下している可能性があるという報告はあったが、個々によって異なるペットボトルの開け方により筋力低下が分かる可能性を示したのははじめて。研究グループは今回、ペットボトルの開け方と筋力低下の関係性を科学的に検証するため、地域在住の高齢者のとくにキャップを開ける際の握り方と筋力低下の関係を調査した。その結果、「逆筒握りでペットボトルを開栓していること」が、筋力低下のサインとして有用であることを確かめた。これにより、「ペットボトル開栓の困難さを感じること」に加えて、開栓動作パターンを評価し、「逆筒握り」かどうかを見ることで、筋力低下のサインを簡便に知ることができる可能性を示した。
この研究は、鹿児島大学と垂水市が協力して実施しているコホート研究である垂水研究に参加した、地域在住の65歳以上の高齢者336人(平均年齢74.6歳、女性8.3%)を対象に実施したもの。
                           (出典 ㈱伊藤園2023.10.17)
研究グループは参加者に、未開栓のペットボトル製品(「お~いお茶 緑茶」525amL)ペットボトル)を、着席した状態で通常の方法で開けてもらい、開栓の動作を観察した。
 キャップの握り方を「側腹つまみ」「逆筒握り」「筒握り」「3指つまみ」の4パターンに分類。その結果、「側腹つまみ」が74%、「逆筒握り」が16%、「筒握り」が6%、「3指つまみ」が3.9%だった。 さらに、参加者の筋力を、利き手の最大握力で測定し、性別ごとに第1四分位値(男性27.8kg、⼥性18.4kg)をカットオフ値とし、それ以下を「筋力低下」とした。
 ロジスティック回帰分析した結果、「逆筒握り」は「側腹つまみ」に比べて、筋力低下と有意な関連がみられた。「筒握り」「3指つまみ」では有意な関連はみられなかった。
このことから、高齢者が「逆筒握り」でペットボトルを開ける動作を行うことが、筋力低下と関連していることが示唆された。「フレイル」は、加齢により体と心の働きが弱くなってきた状態(虚弱)のこと。健康な状態と要介護状態の中間に位置する、身体的機能や認知機能の低下がみられる状態。フレイルの適切な治療や予防を行うことで、要介護リスクを減らせると考えられている。

 2022年の国民生活基礎調査によると、介護が必要となった主な原因は「関節疾患」(19.3%)がもっとも多く、「高齢による衰弱」(17.4%)、「骨折・転倒」(16.1%)と続く。いずれも加齢にともなう「筋力の低下」が関連している。
 加齢による筋力低下は、転倒・骨折・入院・死亡などの健康を害するリスクを上昇させる。筋力低下のサインを早期に知り、早い段階でフレイルに対策することが重要だ。

『フレイル』については、2019年秋号でも紹介しています。フレイルは、「加齢とともに心身の活力(運動機能や認知機能等)が低下し、複数の慢性疾患の併存などの影響もあり、生活機能が障害され、心身の脆弱性が出現した状態であるが、一方で適切な介入・支援により、生活機能の維持向上が可能な状態」とされており、健康な状態と日常生活でサポートが必要な介護状態の中間を意味する。一般的には、フレイルの基準は、5項目あり、3項目以上該当するとフレイル、1または2項目だけの場合にはフレイルの前段階であるプレフレイルとしている。
① 体重減少…6ヶ月で2kg以上の体重減少
② 疲れやすい…(ここ2週間)訳もなく疲れた感じがする。
③ 歩行速度の低下…分速60m <1m/秒
④ 握力の低下…女性20kg以下、男性30㎏以下
⑤ 身体活動量の低下…基礎代謝量の減少。体重×20kcal以下
フレイルを予防するには、①運動を行い、身体機能を維持する。②バランスの良い食事で質と量を維持して栄養状態を保つこと(低栄養にならない) ③引きこもりや孤食を避け社会との関係性を保つことなどが挙げられます。
特に、筋力維持向上を図るには、体重負荷運動が効果的な運動です。特に下肢筋力のアップが生活の質の維持向上に繋がりますので、適切な運動を行い、筋肉量の増大や筋力アップ、歩行能力やADL(日常生活動作)など身体機能の向上を図ることで、サルコペニア(筋肉減少症)やフレイルを予防し、健康寿命の延伸につながります。
誰でも簡単に出来て、すぐ始められる下肢の筋力アップ運動は、両手にポール持って歩く「歩行運動」であるノルディック・ウォークがお奨めです。ポールを使う動作は、上肢の運動に繋がり、結果的に全身運動となります。通常歩行と比べると歩幅も広がり、歩行速度も上がるので下肢の筋力アップには効果的な運動といえます。また、ノルディックポールを使用したスクワットやランジなどのノルディック・エクササイズとポールを使用するノルディック・ストレッチングは、関節などの負荷軽減と運動効果を両立できるので、すべての人々に有益で効果的なアスレティックスタイルです。 最後までお読みいただきありがとうございました。

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