健康運動指導士 大 方 孝
杉並保健所健康推進課委託事業「ここから+10(テン)運動教室」が、6月18日~7月24日までの期間、区内3ヶ所の民間運動施設で行われました。
本事業は、日常から体を動かすことで、糖尿病、心臓病、がん、ロコモティブシンドローム、うつ、認知症などのリスクを下げることが出来るという知見から民間運動施設で3日間の運動教室と保健所での栄養学講座を行う啓発事業で、スポーツハイツでは、6/18、7/2、7/16の日程で運動教室が開催されました。
スポーツハイツ実施事業は、「運動不足を解消して、健康の維持増進を目指す」ことをテーマに、握力・イス座り立ちテスト・継足歩行・アライメントチェック(姿勢写真撮影)などの測定を行い、現在の自分自身の現状を知り、効果的な運動の目当てとし、自宅でも行える筋トレ、ポールエクササイズやノルディック・ウォークと健康講話を3回にわたり行いました。
水泳やウォーキングだけで筋肉はつきません!
日頃、散歩やウォーキングで足腰を鍛えているから大丈夫だと言う参加者もいらっしゃいましたが、通常歩行では、下肢の筋肉など一部の筋肉しか使っておらず、ご本人はしっかり運動をしているつもりでも全身の筋肉量が増加するまでには至っていない場合も多く見受けられます。
一般的に、筋肉量は30歳前後をピークに毎年1%ずつ減少すると言われています。30歳の筋肉量を100とすると、70歳では、60に減少。仮に30歳時と同じ体重としても6割の筋肉量で身体活動するので、当然のことながら疲れるわけです。このことから高齢者ほど筋力アップを心掛けていく必要があります。
さらに、筋肉量が減ると、消費カロリーも減少して肥満になり易くなります。その結果、減少した筋肉量で増えた体重を支えて活動すれば仕事量も増え大変疲れることになります。歳をとったから疲れが出るのではなく、筋肉量が減り仕事量が増えるので疲れをより感じるのです。
また、筋肉量はからだの基礎代謝量の40%を占めており、摂取したエネルギーで消費出来ない余分なエネルギーは、内臓に蓄積され所謂中年太りになります。この状態をメタボリックシンドロームと言い、脂質異常症、高血圧症、糖尿病などの生活習慣病の原因となります。
肥満症(体脂肪率女性30%、男性25%以上)の人が、体重を落とすには、消費エネルギー量の多い有酸素運動がお奨めですが、エネルギーを消費してくれる筋肉量も併せて増やすようにしないと有酸素運動の効果も実効を伴いません。
では、筋肉量を増やすには、どのような運動を行えばよいのでしょうか?一般的には、瞬発力を発揮する時に使われる「速筋」という筋肉を刺激すると乳酸が生成されます。乳酸が溜まると筋肉の肥大を促すホルモンが分泌されて筋肉は大きく強くなります。
さらに、筋肉の材料となるたんぱく質をとることで、より効果的に筋肉量を増やすことに繋がります。つまり、運動負荷をかけつつ、たんぱく質を補給することで筋肉は作られるのです。筋トレ後30分以内に、牛乳やチーズ、プロテイン剤などを摂取すると吸収され易くなります。
家庭などで、普段から手軽に行える筋トレは、自重=自分の体重を負荷として利用する方法で、体の大きな筋肉を使うことがポイントです。正確に負荷をかけるには、1つの動作に3秒かけて1~2秒キープして3秒かけて元に戻すようにします。
【日常生活に取り入れたい筋トレ+プラス10分】
- 種目
①スクワット(椅子の背を利用)足は肩幅、膝は45度に曲げる。
②腹筋(上体お越し) 両肩を床から離し、足は腰幅、両腕は前に伸ばし腿に触れ臍を見る。
③腕立て伏せ(膝附姿勢)両肘は肩幅、指先を内側に向け両手を床につける。 - 頻度
①1日10分 ②週に3~5回 ③午前中に行う - 呼吸
力を入れる時に吐き、力を抜く時に吸う - 意識
負荷を掛ける部位に意識を集中、手で触って確認 - 食物摂取
筋トレ終了後30分以内にたんぱく質を取る。
自宅で出来る筋トレをご紹介しましたが、自分一人ではなかなか運動を始められないし、まして運動を続けることはハードルが高いと思っている方には、健康運動指導士など専門指導員がいる運動施設で健康づくりに適した運動プログラムに参加することをお奨めします。
手軽に始められて、効率の良い運動法としてノルディック・ウォークがお奨めです。ノルディック・ウォークは、両手にグリップがついた2本の専用ポールを交互に地面突きながら歩く運動法。ポールを突くことで身体の90%の筋肉を使う全身運動になります。さらに、ポールを使うことで歩幅が広くなり、歩行速度も上がり時速5㎞~6㎞で歩行することができ、有酸素運動としての高い効果がもたらされます。 転倒予防、姿勢の改善、シェィプアップ効果や血行の改善にも効果があり、しかも通常のウォーキングの効果を高め、より短時間で安全に運動効果が得られる効率の良いウォーキング法です。
以上
体力測定結果