『肩をきちんと使えてますか?』

健康運動指導士 大 方  孝

「肩が凝る。肩を回しにくい。痛みで腕が上がらない。」加齢とともに増えてくる辛い肩の不調。

肩を動かすのに重要な働きをしているのは肩甲骨です。肩の背中に付いている三角形の骨で、上腕の骨は、肩甲骨を介して胴体と繋がっています。

肩甲骨は、上腕三頭筋との腕の筋肉、僧帽筋や広背筋等の背中の筋肉、大胸筋などの胸の筋肉や三角筋などの肩の筋肉など様々な筋肉に繋がっています。

肩関節の基本的な動きは屈曲・前方挙上・伸展・過伸展・外転・内転・側方挙上・水平内転・水平外転・内旋・外旋・描円運動など非常に多様です。肩甲骨を取り囲む筋肉群が腕のスムーズな動きを担っているところから肩は全身からの影響を受けやすいのです。

四十肩、五十肩は肩関節の老化が原因と思われがちですが、運動不足などによりカラダ全体の筋肉が硬くなっていることで発症しやすくなると言われています。例えば、運動不足が続くとモノを取ろうとする動作の時に躯幹筋から動作出来ずに腕だけを動かすようになります。そうすると肩の筋肉の一部に負担がかかり関節に炎症を起すことになります。また、肩は、精神的状況を映す鏡でもあります。「肩に力が入る」「肩で風切る」「肩を落とす」など、心の有様が肩の動きにも現れるようです。

◎肩関節のための水中運動:

五十肩(肩関節周囲炎)は肩関節を安定化させる腱板、肩関節に可動域を与えクッションの役目を果たす肩峰下滑液包、腱板を補助する上腕二頭筋長頭腱などが加齢的退行変形を起こし炎症が生じ、癒着性関節包炎をきたした結果であると言われています。

また、肩凝りの症状は、首筋から肩甲骨の内側の筋肉がこわばり、鈍痛を感じ、何かが詰まったようなパンパンに張った状態で、血管と神経が筋肉に強く圧迫されるために起こります。

その原因は、自律神経の不調、筋肉の疲労、神経障害、以上の原因から起こる肩凝りは、いずれも筋肉の酷使と交感神経の緊張によって、血液の流れが悪くなることが原因です。

肩部の水中プログラムの要点は、①頸部・肩周辺部・背部を中心に関節可動域を拡大させ、各部位の深筋層部分を緩め、周辺部の血流を促し弛緩作用を利用してリラクゼーション及び浮力を利用することで軽い負荷でのトレーニングを行います。

②棘下筋(きょっかきん)、棘上筋(きょくじょうきん)、小円筋、肩甲下筋、大胸筋、大円筋、三角筋  広背筋、僧帽筋、肩甲挙筋などのストレッチングとトレーニングを行い、③肩関節の可動域改善を図ります。

次に主なアクアストレッチングの方法について説明します。

①胸筋ストレッチ:(胸筋・菱形筋・僧帽筋・三角筋)

→肩の高さで腕を伸ばし手のひらを上に向け、腕を水平外転し、左右の肩甲骨を近づけるようにする。リラックスして元の姿勢に戻る。

②肩すくめ運動:(僧帽筋・菱形筋・肩甲挙筋・広背筋)

→両肩を耳の方向に持ち上げ、その状態を保持、静かに肩を下ろす。

③エルボータッチ:(僧帽筋・菱形筋・三角筋後部・胸筋)

→両手を両肩の上におき、両肘は外側に開く。ゆっくりと肘を内転し、

身体の正面で両肘 をタッチする。

④肩まわし:(僧帽筋・肩甲挙筋・菱形筋・胸筋・広背筋・前鋸筋)

→前→上→後→下の順で円を描くように肩を動かす。

⑤クロスショルダーストレッチ:(僧帽筋・菱形筋・棘下筋・

大円筋・小円筋・三角筋後部)→ストレッチする方の腕を反対側に伸ばし、もう一方の腕を肘の上にあて、ゆっくりと反対側に引く。

⑥プルバック:(小胸筋・三角筋前部・上腕二頭筋)

→両手を背中で組み、組んだ手をゆっくりと上に持ち上げる。

⑦プルオーバー:(広背筋・胸筋・大円筋・上腕三頭筋)

→胸の前で両手を組み、組んだ両手をゆっくり出来るだけ高く伸ばす。そのまま保持し、それから腕をおろす。

⑧肩関節の屈曲:(小胸筋・三角筋前部・上腕二頭筋・烏口腕筋)

→両手を身体の前で伸ばし、腕を水面まで引き上げる。(肩関節90°屈曲)

⑨肩関節の伸展:(広背筋・大円筋・上腕三頭筋・三角筋後部)

→両手を後ろにまわし、肩幅に開いて浮き棒を持ち、ゆっくりと両腕を持ち上げる。

⑩肩関節の水平外転・水平内転:(三角筋・胸筋・棘下筋・小円筋・烏口腕筋・広背筋・大円筋・

上腕二頭筋)

→浮き棒の両端を、手のひらを下に向けて持ち、肩の高さで身体の前に構える。体幹をひねらないようにしながら、非訓練側の腕で反対方向に棒を押す。(訓練側の肩が水平外転位)、次に浮き棒を反対側に訓練側の肩を水平内転位にする。

⑪肩関節の内旋・外旋:(広背筋・肩甲下筋・大胸筋・大円筋・棘下筋・小円筋・三角筋・上腕二頭筋長頭)

→片方の腕は、手のひらを後ろに向け、肘を屈曲して背中に回し浮き棒を持つ。他方の腕を上に挙げて肘を曲げ頭の後ろで浮き棒を持つ。この時浮き棒が背面側で垂直になるようにし、棒を引き上げたり、引き下げたりする。 


五十肩や肩凝りの予防改善に欠かせないのが運動不足の解消と筋力アップです。水中で抵抗具を利用したウォーターレジスタンスエクササイズについて説明します。

①肩のプレスダウン:(僧帽筋・小胸筋・広背筋・三角筋)

→両手にアクアダンベル(ミット等でも可)等を持ち、肘を曲げて胸の前に構え、肘を伸ばしてダンベルを下に押し下げる。

肩プレスダウン

②肩関節の内転、外転運動:(内転…大胸筋・広背筋・大円筋・上腕二頭筋短頭/外転…三角筋内側部・棘上筋・三角筋前部・上腕三頭筋)

→両手にアクアダンベル(ミット等でも可)等を持ち、両手を横に開き肩の位置に保つ。両腕を股関節方向に引きつけ(内転)、元の肩に位置に戻す(外転)

③肩関節の屈曲運動:(屈曲…三角筋前部・小胸筋・上腕二頭筋・烏口腕筋)

→両手にアクアダンベル等を持ち、腕を体側につけ、手のひらは前に向け、水面方向に持ち上げる。また体側側に引き下げる。

④肩関節の伸展運動:(伸展…広背筋・大円筋・上腕三頭筋・三角筋後部)

→両手にアクアダンベル(ミット等でも可)等を持ち、腕を体側につけ、手のひらは後に向け、後方水面の方向に持ち上げていく。また体側側に引き下げる。

⑤肩関節の水平外転・内転運動:(外転…三角筋内側部・三角筋後部・棘下筋・小円筋・広背筋・大円筋/内転…三角筋前部・大胸筋・小胸筋・烏口腕筋・上腕二頭筋)

→両手にアクアダンベル(ミット等でも可)等を持ち、肩の高さで身体の前に構え、両手を身体の正中線から離れる方向動かす(外転)。手のひらを内側に向けて両手を元の位置に戻す。(内転)

⑥肩関節の内旋、外旋運動:(内旋…肩甲下筋・大円筋・三角筋前部・小胸筋・上腕二頭筋/外旋…棘下筋・小円筋・三角筋後部)

→訓練用の腕にアクアダンベル(ミット等でも可)等を持ち、肘を90°に屈曲して脇につける。前腕は、床と平行に保ち、肘を支点にゆっくりと肩を外旋させる。それから、肩を内旋させ、手は身体の正中線を横切るように動かす。

肩関節のためのアクアストレッチング、ウォーターレジスタンスエクササイズについてご説明しました。1人で運動を行う際には、働く筋肉の部位を意識しながら行うことで、さらに効果を上げることが出来ますのでご参考になさって下さい。五十肩や肩凝りでお悩みの方は、是非プールお越しの際にはストレッチングやレジスタンスエクササイズをお試し下さい。

今回、肩関節に係わる筋肉の名称や運動動作名称など専門的な用語が多くて難解、ハードルが高いと思っている方には、健康運動指導士など専門指導員がいる運動施設で健康づくりに適した運動プログラムに参加することをお奨めします。さらに、運動施設等の運動教室に参加するというような社会参加は、脳機能を活用し認知機能を維持することに役立つばかりでなく、身体活動量を増やし運動機能を維持することにも効果があります。

 めざせ 健康生活!!  運動不足を解消して、明るく楽しく健康な毎日を過ごしましょう。

以上