健康運動指導士 大 方 孝
日々の生活の中で運動不足を感じている人は意外に多いのではないでしょうか。このままでは、体調ばかりか日常生活にも支障が出そう。しかし、忙しくて時間が取れない。いざ、運動を始めようと思って何をしたらよいか分からない。という方も多いのが現実。運動を継続して習慣化するのは大変に難しいことです。運動不足は、健康に係わる3つの問題に繋がると言われています。
①生活習慣病…内臓疾患、糖尿病、脳卒中の発症を招く。 ②ロコモティブシンドローム…運動器症候群→日常生活に必要な運動機能の低下を招き転倒・骨折から要介護状態となるリスクが上昇する。③その結果、うつ病や認知症といった脳神経の疾患に繋がる。
運動不足とは、身体活動が十分でない状態です。スポーツを楽しんだり、運動施設でカラダを動かすだけでなく、通勤で歩いたり、家事等の生活活動も含まれます。しかし、今日では生活の利便性が進み、生活の中でカラダを動かす機会も減り、食の欧米化の影響から肥満のリスクも上昇しています。2011年に厚労省が発表した「健康日本21」(21世紀における国民健康づくり運動)によると、日本人の1日の歩数は、1997年から2009年の間に約1000歩減少したそうです。
歩行時間にすると1日あたり10分減少したことになり、消費エネルギー30kcalに相当。単純に年間に換算すると、30kcal×365日で10,950kcalとなり、脂肪1kgが約7,000kcalとして脂肪が1.56kg増加する計算になります。運動不足は、それだけで太りやすい体質になっていきます。
さらに、ケンブリッジ大学などの研究チームは、欧州のガンと栄養に関するコホート研究に参加、約33万人のデータを解析した結果、20分の活発なウォーキングを毎日続ければ早死にする危険性を大きく下げられることが調査で判明した。『運動不足』は、「肥満」に比べ死亡に繋がる危険性が2倍も大きいという。『運動不足は最大の危険因子だ』と研究者は警鐘を鳴らしています。
運動しないで座ったままの生活では、1日の消費エネルギー量は、体重1kg当り8.6キロカロリーほど、体重70kgの男性は、1日約600kcalしか消費しないことになります。
一方、時速6㎞~7㎞の活発なウォーキングを20分行うと、それだけで約90kcal~110kcalのエネルギーを消費出来るそうです。運動量をどれだけ増やすと効果的かを探求することも重要ですが、先ずは運動を生活スタイルの一部として定着させることがより重要ではないでしょうか。
運動を行うと血中のブドウ糖や脂肪酸の利用が促され、血糖値や血圧が低下し、エネルギー摂取量と消費量のバランスが改善し、体重を減らす効果があります。
これらのことから、先ずは『プラス10』 を励行。+10とは、1日10分間余計にカラダを動かすこと。10分で、1000歩。消費エネルギー30kcalに相当。1年で1.5kgの体重減に繋がります。
さらに、ウォーキングを続けている方、これから始めようという方は、効率の良い運動の仕方として、ノルディック・ウォークがお奨め。ノルディックウォークは、両手にグリップがついた2本の専用ポールを交互に地面突きながら歩く運動法。ポールを突くことで身体の90%の筋肉を使う全身運動になります。さらに、ポールを使うことで歩幅が広くなり、歩行速度も上がり時速5㎞~6㎞で歩行することが出来有酸素運動としての高い効果がもたらされます。 転倒予防、姿勢の改善、シェィプアップ効果や血行の改善にも効果があり、しかも通常のウォーキングの効果を高め、より短時間で安全に運動効果が得られる効率の良いウォーキング法です。
また、ウォーキングを行う際に「1分間の脈拍数を計測する」ことで効果的な運動強度が確認出来ます。脈拍数は運動中に常に変動しています。また、脈拍数の変動には個人差があり、運動を習慣化している人がウォーキングすると脈拍数は上がりにくく、習慣的に運動を継続すると、より長い時間の運動も行えるようになります。
健康づくりを目的に行う運動時の脈拍数の目安は、138-(年齢÷2)という計算式で求められます。 60歳の方の場合、138-(60÷2)=108拍が目安。
そうは言っても、自分一人ではなかなか運動を始められないし、まして運動を続けることはハードルが高いと思っている方には、健康運動指導士など専門指導員がいる運動施設で健康づくりに適した運動プログラムに参加することをお奨めします。運動施設等の運動教室に参加するというような社会参加は、脳機能を活用し認知機能を維持することに役立つばかりでなく、身体活動量を増やし運動機能を維持することにも効果があります。
めざせ 健康生活!! 運動不足を解消して、明るく楽しく健康な毎日を過ごしましょう。
以上