健康運動指導士 大 方 孝
厚生労働省の調査によると、2013年の日本人の平均寿命は、男性80.21歳、女性86.61歳で何れも過去最高を記録し、男性寿命は初の80歳を超えたことが分かった。女性は2年連続で長寿世界一となった。医療技術の向上等によりガン、心疾患や脳卒中で死亡する人が減ることで平均寿命の延伸に影響していると見ています。
一方、加齢に伴い、筋力が衰えて階段等の昇り降りも一苦労する。少し動いただけでもすぐに疲れる。これを老化現象と半ば諦めている高齢者は多いようです。
日本老年医学会では、歩く速度が落ち、体重が減少し、体力も衰え、日常生活を送ることが困難となる状態を「フレイル」と定義しています。フレイルとは、英語で虚弱や老衰などを意味する“Frailty”を元にした概念で日本老年医学会が考案しました。75歳以上の後期高齢者の多くが、何の対策も取らずにいるとフレイルの段階を経て要介護状態に陥ることが予想されます。日本老年医学会では「食事や運動によるフレイルの1次、2次予防の重要性」を提唱しています。
また、このフレイルに似た概念に、加齢に伴い筋肉量や筋力が著しく減少し、寝たきりに至る危険が高い状態となる「サルコペニア」や運動機能が低下した状態となる「ロコモティブシンドローム(運動器症候群)」も提唱されています。
米国老年医学会の基準では、①体重減少、②歩行速度の低下、③握力の低下、④疲れやすい、⑤身体活動の低下、これらの5項目のうち、3つが該当するとフレイルとされています。
フレイルの予防には、適度な運動とし食生活の組み合わせが欠かせません。フレイルの予防法は、①ウォーキングなど適度な有酸素運動、②たんぱく質やビタミンなどを豊富に含む食事、③指導員の下で適度なレジスタンスエクササイズ、④感染症の予防、⑤手術後は早めのリハビリ、⑥6種類以上の服薬する場合は医師と相談する。などです。
また、日本老年医学会のサルコペニアの診断基準では、①握力(=男性26kg未満、女性18kg未満)と②歩行速度(=秒速0.8m=分速48m以下)を測定し、①と②の何れかと筋肉量(DXA)が減少している場合にサルコペニアとされる。と定義しています。
このことから虚弱・老化症状を予防し、要介護予備軍とならず健康寿命の延伸を図るには、健康運動指導士など専門指導員がいる運動施設で健康づくりに適した運動プログラムに参加することが効果的です。
例えば、腰痛や膝等の関節疾患や骨粗鬆症の方には、水中ウォーキングなどの水中運動がお奨め。水中での立位の運動は、水の物理的な特性を利用して高い運動効果を得られ消費カロリーも多く代謝もアップ出来る優れ者です。また、全身を使う有酸素運動として血管を活性化させるので老化を予防し若さを保つ効果が大きいと言われています。
水はちょっと苦手という方には、ノルディックウォークがお奨め。ノルディックウォークは、2本のポールを交互に地面突きながら歩くことで身体の90%の筋肉を使う全身運動になります。さらに、ポールを使うことで歩幅が広くなり、歩行速度も上がります。このことから有酸素運動としての高い効果がもたらされます。 転倒予防、姿勢の改善、シェィプアップ効果や血行の改善にも効果があり、しかも通常のウォーキングに比べエネルギー消費量が20%、酸素摂取量は約20%上がり、さらに心拍数も6%上がるという報告もあります。
さらに、今秋頃には、水中運動とノルディックウォークを融合したアクアノルディックウォーク&エクササイズもお目見えの噂も。専用のアクアノルディックポールを使う水中運動とノルディックウォーク双方の好いとこ取りのエクササイズです。
そうは言っても、自分一人ではなかなか運動を始められないし、まして運動を続けることはハードルが高いと思っている方には、健康運動指導士など専門指導員がいる運動施設で健康づくりに適した運動プログラムに参加することをお奨めします。
例えば、プラス・テン、普段はストレッチングやウォーキングなどで今より10分多く体を動かすようにしましょう。そして休日には、まとめてライフスタイルに合った運動を行うようにしましょう。
ご参考までに、目的別のプログラムは5つのスタイルがあります。
①転倒予防・健康づくりには、ノルディックウォークとアクアウォーキングやアクアストレッチング。
②ロコモ予防、登山やスキーのトレーニングには、ノルディックウォーク&ポールエクササイズや
アクアレジスタンスサーキット。
③メタボ予防、シェイプアップには、ノルディックウォークやアクアダンベルEX、アクアジョグ。
④面倒くさがり屋さんには、アクアノルディックウォーク&エクササイズが、お奨めです。
⑤しっかりボディケアをしたいという方には、ノルディックウォークの後にゆっくりと水中ウォーキングを楽しみ、水中でストレッチングを行うと、さらに効果的。ウォーキングの疲れも一発で緩和します。また、浮き棒を使ってプカプカ浮けば、副交感神経が優位に働きリラクゼーション効果もバッチリ、身も心も軽くなります。
勿論、どなたでも、お好きな時に、お好きなエクササイズを組み合わせて行えば、虚弱・老化症状を予防し、要介護予備軍とならず、健康寿命の延伸を図るだけでなく、明るく楽しく健康な毎日をお過ごし頂けることに間違いありません。さあ、始めましょう! 貴方も健康生活。
以上