『日本ノルディック・ポール・ウォーク学会学術大会報告』

 健康運動指導士・JNWLウォーキングライフマイスター 大方 孝

 いつもお読み頂き有難うございます。

足掛け3年に及ぶコロナ禍もワクチン接種が国民の7割に達したそうで、11月に入り感染拡大にブレーキがかかり始めたようです。しかし第6派の感染拡大も懸念されているので油断大敵。

当分はこれまでの感染予防対策を継続して励行していく必要がありそうです。

コロナ禍で「巣ごもり生活」が続きウォーキングなどの軽運動を控えたり、中断してしまうと運動不足や人との関わり合いが減る状態が続き、中高齢者では、筋力低下(サルコペニア)によるロコモ(運動器症候群)やフレイル(心身の虚弱状態)に陥ってしまうことが少なくありません。

さらに運動不足が続くと老化を早めてしまう恐れがあります。コロナ禍が終息に向かう今こそ、これまでの生活習慣を改めて心身健康な毎日を取り戻す時期に来たといえるのではないでしょうか。

さて、10月30日-31日に鹿児島で予定されていた第10回日本ノルディック・ポール・ウォーク学会も新型コロナウィルス感染症拡大防止のため中止となり、さらに私が担当する予定であった九州初の水中ポールウォーキング体験会も残念ながら中止となりました。

コロナ禍で2年続けての学会中止はなんとしても避けなければならず、学会関係者のご熱意により10月30日(土)にオンライン開催されることになりました。今回は、特別講演「水中運動と脳のはたらき」 東京大学名誉教授 宮下充正先生のご講演ダイジェスト版の内容をご報告します。 

◎お役立ち情報①…水中と陸上ウォーキングの比較

平均年齢27歳の健康な男女11名を対象に10分間ウォーキングを行い、2分ごとの漸増負荷試験を課した。水中ウォーキングは、水深は腰の深さ、水温30℃で水中を時速4kmで2分ごとに1kmずつ上げる負荷とした。陸上ウォーキングは、時速6kmで2分ごとに1kmずつ上げる負荷とした。

  • 水中と陸上ウォーキング中の心拍数

心拍数は、安静時に比べ水中、陸上とも徐々に増加した。10分目の心拍数は、最高心拍数に対して水中ウォーキングで75%、陸上ウォーキングで84%を示した。

  • 水中と陸上ウォーキング中の脳血流速度

安静時の中大脳血流速度に比べ陸上ウォーキングはスピードが上がるにつれて徐々に増加した。水中ウォーキングは最初の4分間で急増した。その後は ほぼ同じの増加だった。

中大動脈血流速度は、水中の方が有意に速かった。両者の差はウォーキング開始後10分には6cm/秒であり、 最も差が大きかったのは運動開始4分後16cm/秒であった。

  • 血流速度の増加は、脳血管壁に適当な刺激を与える

水中ウォーキングは、低い強度でも(心拍数がすくなくても) 中大動脈血流速度を増加させる。中大動脈血流速度の増加は一回当たりの心拍出毎に血流量は増減し脳血管壁へ反復して刺激を与えると予測される。この刺激は、血管を構築する平滑筋への適当刺激となり脳血管の健康を保持するために有効と推察される。このことから左右の脳の中央部で測定された血流速度の増加だけで、認知症を予防する上で水中ウォーキングが陸上ウォーキングに比べて有効であるとは必ずしも断言できない。しかし、よく運動する人の方が前頭葉の萎縮の進行が遅いといった長期間の観察研究は、大脳血流速度の増加が認知症予防につながるという傍証として挙げられる。

◎お役立ち情報②…水中ウォーキングの効能

 水中では浮力に影響されるので姿勢のバランスを保持する必要がある。そのため陸上に比べより多く運動野の細胞が活動する。水中ウォーキングでは、水の抵抗を皮膚で感じる。これらが脳の感覚野のより多くの細胞を活性化させる。

◎お役立ち情報③…水中ウォーキングの効果

・水中では浮力と抵抗により荷重関節などの筋骨格系の負荷を軽減する。

・水中では、水圧により血液が体の中心部に集まり心血管系機能の効率が高まり血液の環流が好転する。

・水中ウォーキングは、歩行能力回復の手段となるので脊髄損傷や脳卒中患者のリハビリテーションとして利用されている。水中ウォーキングは、関節障害や冠動脈疾患を有する人達の運動不足を解消する。

・ケガをしたアスリートが現役復帰に向けて呼吸循環器系機能の保持に有効である。

 以上のように健康な人から疾病を有する人まで様々な人達にとって水中ウォーキングは効果的な運動プログラムである。

 さて、宮下先生のご講演内容は如何でしたでしょうか。

あらためて水中ウォーキングの効果効能を再認識いたしました。特に脳に対する刺激が有意である点。さらに、我が国の65歳以上の人の6人に一人が認知症や認知症を疑われる人とされる昨今、認知症の予防に繋がる可能性という示唆は大変興味深いデータでした。

繰り返しになりますが、長期間に及ぶ運動不足は、足腰や心肺機能を衰えさせます。一度機能が低下すると動くことが億劫になり、さらに活動量が減少するという悪循環に陥ります。動かなければ、食欲もなくなり、ますます体力の低下を招きます。こうなると生活習慣病やフレイルなどのリスクが高まり、放置すれば寝たきりリスクや健康寿命短縮につながります。

そこで、日頃からウォーキングや水中運動などの中強度の運動をコツコツ行うことが、何よりも健康寿命の延伸に繋がります。

運動は継続することが大切です。年間を通じて運動を続けることはすべての人の心とカラダに有益です。健康を維持するには、食事もしっかり摂り、良質な睡眠を取ること。つまり、運動・栄養・休養に不足が生じないように日々心掛けることが大切です。

運動が不得手な方、体力に自信がない方、腰・膝・股関節・肩などが気になる方は、ぜひ一度お試しいただきたい教室です。

また、(一社)全日本ノルディック・ウォーク連盟・公認ノルディックウォーク・ステーションとしてノルディック・ウォーク月例会を毎月開催しています。

2本の魔法の杖(ポール)を使うノルディック・ウォークとノルディックポールエクササイズ (ポールを使ったストレッチングと自重筋トレ) がお奨めです。

Let’s Go!! ノルディック・ウォーク 一緒に楽しんでみませんか?  

 最後までお読みいただきありがとうございました。