AQUA HEALTH COMMUNICATIONS
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Vol.21 平成18年9月

 

ふじみ野市のプール事故を改めて考える

 今年の夏休みは、遅い梅雨が明けたとたんに悲しいニュースが飛び込んできました。去る7月31日の夕方、テレビ画面で、公営プールのプールサイドの映像が映し出されていました。それは、流水プールの吸水口が見える辺りのプールサイドがブールシートに覆われ、さらにその付近の地面を重機が掘り返す映像でした。市民プールの流れるプールの吸水口に小学2年生(7歳)の女子児童が吸い込まれ、それを救助している現場中継の映像でした。
 重機の動きや懸命救助に当たる人たち、消防車がプール水を排水している映像を見ながら、これは最悪の事態となるではないかと直感的に思いました。夜の9時過ぎに、残念ながら吸い込まれた『女子児童の死亡確認』というニュース速報の字幕が流れ、プール事業に係わる身としても、親の立場としても、この事態は決して看過できることではないと思いました。
 さらに、関連のニュースを見ていたところ、テレビ朝日のスクランブルという番組の記者から、今回の吸い込み事故についてのコメントを求める電話がかかってきました。突然の連絡で、しかも事故の全容か明確になっていない状況の中でコメントを求められました。明日の番組で事故を検証するということでインタビューに協力することにしました。これまでの実務経験に照らして、次のような点を指摘しました。事故の状況(吸い込み防止の外柵がはずれて吸い込まれた)から推察して、

  1. プールの構造的な問題があったのでは?
    (外柵はボルト等で固定されていたか、吸水口には防止金具が付いていなかったのか、など)
  2. 現場の監視体制・安全管理は万全であったか?
    (監視員は有資格者か、救助訓練は行なわれていたか、始業・終業点検の実施と記録は行なわれていたか、など)
  3. 市町村と業務委託業者間の情報と安全意識の共有に不備がなかったか?
    (配置人員は適正か、安全管理マニュアルは整備されていたか、施設設備の点検情報が共有化されていたか、など)

の3点が要点ではないかと指摘しました。
 さらに、翌日8月1日もフジTVから、同様に夕方のスーパーニュースでプール事故の徹底検証ということで担当の記者からコメントを求められ、インタビューを受けました。その後の事故の概要は、ご存知の通りテレビや新聞などの報道の通りです。まさに原則や基本を怠った人災でした。
 8月10日読売新聞の夕刊記事によると、「吸い込み防止不備(公立校・公営プール)2339か所」 「埼玉県ふじみの市のプール事故を巡り、文科省は8月10日、全国の公立学校のプールと教育委員会所管の公営プールを対象にした緊急調査の最終集計結果を公表した。排水口の蓋が固定されていなかったり、吸い込み防止金具が設置されていなかったりするなど管理安全に不備のあるプールは、延べ2339か所に上った。最終集計によると全国の公立学校でプールが設置されているのは、3万127校、公営プールは全国2824か所。このうち蓋が固定されていないプールは、40都道府県375か所。吸い込み防止金具が設置されていない所が39都道府県1964か所だった」。
 この緊急調査結果を受けて、事故対策に関する関係省庁連絡会議が開催され「プールにおける安全確保の為の緊急アピール」が採択されて全国のプールの安全確保のための緊急自主点検が行われました。
 プール事業者として、業界の構造的な面から今回の事故をあらためて検証してみたようと思います。プールの監視業務は従来から区市町村などでは、「警備等」という種別で指名競争入札などによって業務委託されています。通称“親”と呼ばれるビルメン業者が、清掃や植栽と警備など共に監視業務を委託される場合が多く、とりわけ夏季のプール監視業務などは、”子“と呼ばれる協力業者にプール管理業務が「丸投げ」されるケースが多いようです。なぜ、専門のプール管理業者が直接入札しないのか(出来ないのか)という疑問が残ります。これは、公共施設の指名競争入札の場合には、当該区市長村の業務実績や事業者の売上高など規模(=担保)によって指名が採択される場合が多く、例えば、売上高1500万円程度の業者には、どんなに専門性が高くとも5千万円とか、1億円などという物件は指名されることは、先ずないという仕組みになっています。
 従って、ビルメン業者などとコラボレーションしなければ、プール監視業務に参入することは叶いません。一方、ビルメン業者は監視業務という季節業務はアウトソーシングした方が効率的なので、当然のことながらプール業者と組むことになります。
しかし、コラボレーションやアウトソーシングが今回の事故の原因であると考えるのは少々早計だと思います。コラボやアウトソーシングはビジネスモデルの一つに過ぎないからです。指定管理者制度やPFIといった事業においてもコンソーシアムとして利用されていますし、当然のことながらビジネスとして利潤を追求していく上では当たり前のことなのです。今回の事故では、ふじみ野市からビルメン業者に1155万円で業務委託され、さらに協力業者に丸投げされています。仮に60日間の開場として、1日10時間×延べ17人配置で1万200時間、時給900円として、918万円、残り230万円が管理料などというところです。極論すれば、事故さえなければ、監視員は高校生のアルバイトでも事足りるという安易な儲け主義に起因しているのではないでしょうか? 大切な人命を預かる監視員の時給が1千円以下というのは、あまりにも安易なコスト削減策が事故の原因の一つになっているとも思えます。監視員の時給額は、他のアルバイトの時給額と比べても決して高いわけではありません。ところが、今回のような悲惨な事故が起きれば、例え時給900円で働くアルバイトと云えども、何らかの刑事・民事上の責任を問われる恐れもあるのです。
 昨今、パート・アルバイトや契約社員・派遣労働と、多用な雇用形態が増え、コスト削減の切り札となっています。また、「雇用形態ではなく、仕事内容や役割に応じて賃金が決るような評価、処遇の仕組みが必要」と労働組合の連合は主張しています。例えば、旅客機のキャビンアテンダントは一歩譲ったとしても、もしパイロットが、時給のアルバイトであったら利用者は安心して利用するでしょうか?! やはり、業種・責任に見合った賃金水準というもの考慮すべきではないでしょうか?!  また、再びこのような悲惨な事故を防止する観点から、プールの入札・業務委託において区市町村は、安全軽視のコスト削減をやめ、採択基準を売上高や取引実績を担保する基準だけでなく専門性や実務能力といった基準も選択に際して考慮すべきではないでしょうか。なるほど、なるほど。  最後まで、お読み頂きまして有り難うございました。読者の皆様に、何か良い”気づき”があれば幸いです。 では、今日はこの辺で。

(有)アクアヘルスコミュニケーションズ
大方 孝

 
 

 

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